コンクリート診断士

【コンクリート診断士】成分溶出とは?概要と特徴

成分溶出とは?

成分溶出とは、コンクリート中のセメント水和物が周囲の水に溶解してポーラス(疎)な状態となる変質・劣化現象です。「風化・老化」に分類される現象の一つです。

特徴

メカニズム

成分溶出には、水質(硬度)と流速が大きく影響します。

水の硬度とは、水の中に含まれるカルシウム塩やマグネシウム塩などの濃度で表されるものであり、硬度が高い水を硬水、低い水を軟水といいます。成分溶出によるコンクリートの劣化は、硬度の低い軟水、遊離炭酸ガスを多く含む地下水や酸性雨との接触などによって生じます。コンクリートがこのような水と接触すると、コンクリート中のセメント水和物が周囲の水に溶解して組織がポーラス(疎)な状態となります。

溶出しやすさ

軟水の場合の方が、硬水の場合より溶出速度は大きくなります。

コンクリートの主要水和生成物のうち、最も溶解度が大きいのは水酸化カルシウムであり、カルシウムシリケート(C-S-H)よりも溶出しやすいです。水酸化カルシウムの溶出速度には、接触する水質の影響が大きいです。コンクリート表面から接触水中へCa(OH)₂が溶出すると、コンクリート表面近傍とのCa(OH)₂の濃度差を緩和するように、コンクリート内部の細孔溶液中のCa²⁺とOH⁻が表面方向に移動します。そのため、硬度が低くカルシウムやマグネシウムの量が少ない接水条件の方が、Ca²⁺とOH⁻を移動させやすいため成分溶出は顕著になります。

強度について

成分溶出が進行し、C-S-H中のCaOが溶解するとpHは低下し、C-S-H中のCa/Si比も低下するので、硬化体組織は多孔化し強度低下を起こします。また、接触水の流速が速いほど劣化は促進されます。

上記のように、水酸化カルシウムの溶出により、コンクリートはその表面からアルカリ度(pH)が低下するほか、組織がポーラス(疎)となり脆弱化するため、表面硬度は小さくなります。なお、このような溶出による変質は、水と接触するコンクリート表面から内部に向かって徐々に進行します

まとめ

水と接触する表面からアルカリ分が消失しpHの低下が生じる

硬水中に比べて、軟水中の方が成分溶出は大きい

コンクリートに接する水の流れが速いほど、成分溶出は起きやすい

問題

それでは、最後に下記の問題を解いてみましょう。

「Ca(OH)₂やカルシウムシリケート水和物(C-S-H)が溶出すると、コンクリートの空隙量が増大する」

○か×か。

正解は下にスクロールしてください。

 

 

正解は○です。

今回は以上になります。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。