コンクリート診断士

【コンクリート診断士】複合劣化とは?塩害×中性化について

こんにちは!

今回は塩害×中性化を中心に、複合劣化についてまとめてみます。

最後に問題もあるので、良ければ解いてみてください。

それではいってみましょう!

複合劣化とは?

複合劣化とは、中性化(炭酸化)、塩害、アルカリシリカ反応、凍害、化学的腐食や、それらによる鉄筋腐食が、単独ではなく同時に複数で進行する劣化のことを言います。

具体的に、どのような複合劣化があるのか以下に述べます。

塩害×中性化

メカニズム

コンクリート中の塩化物イオンはセメント鉱物と反応し、化合物として固定されます。この固定によって生成される代表的な化合物が、C₃Aと塩化カルシウムの化合物であるフリーデル氏塩です。

ところが、この固定された塩化物イオンは、中性化によって細孔溶液中に浮遊します。これによって塩化物イオンの濃度勾配が増大し、塩化物イオンの移動が促進され、中性化した部分より内部に塩化物イオンが濃縮されます。

これにより、鉄筋位置での塩化物イオン濃度が上昇し、塩害が促進されます。

また、中性化による細孔溶液のpHの低下は、鋼材の腐食時期を早める可能性があります。

塩害と中性化のメカニズムは次の通りです。

  1. モノサルフェートが塩化物イオンと反応し、フリーデル氏塩となる
  2. フリーデル氏塩が炭酸化する
  3. フリーデル氏塩中に固定されていた塩化物イオンが細孔溶液中に溶解する
  4. 細孔溶液中の塩化物イオン濃度が上昇し、濃縮と拡散を繰り返し内部へと浸透していく

要因

複合劣化に影響を及ぼす要因は、単独の劣化に影響を及ぼす要因から考えることができます。

たとえば、高水セメント比のコンクリートは、中性化も塩害の進行も速いため、複合劣化の進行も速くなります。

また、高炉スラグ微粉末やフライアッシュ、シリカフュームなどの混和材を用いると、塩化物イオン浸透に対する抵抗性は向上します。

しかし、混和材をセメントに置き換えて使用することによりセメント量が減ること、これらの混和材の水和で水酸化カルシウムが消費されることから、中性化に対する抵抗性は低下します。

混和材を大量使用する場合は、環境によらず複合劣化の可能性に留意する必要があります。

腐食開始時期

中性化が単独で生じた場合の腐食開始時期は、一般に中性化残り(かぶりから中性化深さを引いた値)10mmとされています。

塩害の場合、鋼材位置の塩化物イオン濃度が1.2~2.5kg/m³程度となった時点とされています。

塩害と中性化の複合劣化では、中性化の影響によって未中性化部分に塩化物イオンが濃縮することから、劣化初期において腐食に影響しているのは塩化物イオンということになります。

つまり、複合劣化による鋼材腐食開始時期を考える場合は、鋼材位置の塩化物イオン濃度が重要ということになります。

アルカリシリカ反応×塩害

アルカリシリカ反応によるひびわれは、コンクリート中の鉄筋への塩化物イオンや酸素の供給を促進することになり、塩害を促進します。

また、ASRにより細孔溶液中のOH⁻が消費されることにより、鋼材の腐食時期が速くなる可能性があります。

凍害×塩害

凍害によってコンクリート中の水分が凍結融解を繰り返すと、塩化物イオンが凍結部から未凍結部に移動し、塩化物イオンの移動が促進され、塩化物イオンの濃縮によって塩害が促進される可能性があります。

また、凍結融解作用による組織のポーラス化(スカスカな状態)や、凍害によるスケーリングやポップアウトによってかぶりが減少し、塩化物イオンや酸素などの腐食因子の供給が促進されて、塩害が促進される可能性があります。

化学的侵食×塩害

化学的侵食による組織のポーラス化やかぶりの減少は、塩化物イオンや酸素などの腐食因子の供給を促進するため、塩害が促進される可能性があります。

また、の侵入により細孔溶液のpHが低下して、鉄筋の腐食時期を早める可能性があります。

問題

それでは、最後に次の問題を解いてみましょう。

次の記述は○か×か選択してください。

「中性化が進行して塩化物イオンの濃縮が起こるのは、エトリンガイトが分解するためである」

正解は下にスクロールしてください。

 

 

 

正解は×です。

正しくは、「エトリンガイト」ではなく、「フリーデル氏塩」が分解するためです。

今回は以上になります。

最後までお読みいただき、ありがとうございました!