コンクリート診断士

【コンクリート診断士】鋼材腐食とは?メカニズムと不動態皮膜について

今回は、鋼材腐食についてまとめてみます。

最後に問題もあるので、解いてみてください。

それではいきましょう!

鋼材腐食とは?

鋼材腐食とは、pHの低下あるいは塩化物イオンの作用により鋼材が腐食する形態の劣化のことを言います。

鉄筋は、表面の不動態皮膜が破壊されることにより腐食が開始します。腐食生成物の体積が膨張し、コンクリートにひびわれや剝離を引き起こしたり、鉄筋の断面が減少して、構造物の性能が損なわれます。

鋼材表面には不動態皮膜という薄い酸化鉄(F₂O₃)の膜があり、鋼材を腐食から保護しています。

メカニズム

腐食反応はアノード反応カソード反応に分けて考えられています。

アノード反応は、塩化物イオンによって鋼材表面の不動態皮膜が破壊されることにより、鋼材表面から鉄イオンが細孔溶液中に溶け出す反応です。

カソード反応とは、溶け出した鉄イオンが残した鋼材中の電子が酸素と水と反応するものです。

具体的には、次のような順番で腐食が進行します。

鋼材表面の不動態皮膜が塩化物イオンにより破壊

アノード反応:Fe → Fe²₊2e⁻

カソード反応:1/2 O₂₊H₂O₊2e⁻ → 2OH⁻

Fe₊1/2 O₂₊H₂O → Fe²⁺ ₊ 2OH⁻→ Fe(OH)₂

Fe(OH)₂が酸化し、アノード部で錆が生成する

また、健全なコンクリートはpH13~14程度の高アルカリで、このようなコンクリート中の鋼材は腐食しません。

鋼材腐食の条件は次のことが挙げられます。

  1. 不動態皮膜が破壊されていること
  2. その状態において、カソード表面に十分な量の酸素(O₂)と水(H₂O)が存在すること

また、不動態皮膜が破壊される条件としては、鋼材深さ付近まで中性化した場合鋼材表面の塩化物量が腐食発生限界量以上である場合があります。

腐食形態

鋼材の腐食形態は、次のように大別されます。

マクロセル腐食:アノードとカソードが離れた場所に存在する状態で進行する。

ミクロセル腐食:アノードとカソードが同じ場所で進行する。

マクロセル腐食は、ミクロセル腐食よりも腐食速度が大きく、マクロセルのアノード部は早期に激しく腐食する場合があります。

鋼材腐食に伴う変状

鋼材腐食に伴う変状として、次のような外観的変状があります。

  1. 腐食によるひびわれ
  2. 錆汁
  3. 剝離、剝落

ひびわれの特徴として、鉄筋に沿ったひびわれや、かぶりの剝離ひびわれなどがあります。

劣化を促進する条件

劣化を促進する条件としては、次のことが挙げられます。

・コンクリート材料に含まれる塩分量が多い場合

・中性化が促進される環境

・塩分が多く供給される環境

・比抵抗の小さい湿潤なコンクリート

・かぶりが小さい場合

・補修部と未補修部の境界で局部電池(マクロセル)を形成し腐食する場合

ちなみに、水中に溶存する酸素量は低濃度であるため、水中(地下水位以下)の部材は腐食しにくいです。

問題

それでは、最後に次の問題を解いてみましょう。

次の記述は○か×か選択してください。

「マクロセル腐食とは、腐食電池の形成が広い範囲にわたる場合、その腐食電池をマクロセルといい、このような形態の腐食をマクロセル腐食と言う。」

○か×か。

正解は下にスクロールしてください。

答えは○です。

今回は以上になります。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました!